以前、経皮吸収の基本情報とその仕組みについて解説しましたが、今回はなぜ経皮吸収が注目されているのかをさらに詳しく解説していきます。
経皮吸収のメリット
大きく3つのメリットが存在します。
1. 時間削減、摂取忘れ防止
一般消費者が最もメリットを感じやすい部分がこれですね。
錠剤型の薬やサプリメントだと、決まった時間に決まった分量を取り出し水と一緒に飲まなければいけないのですが、経皮吸収型の薬やサプリメントであれば朝に貼るだけで1日中効果を発揮するので手間と時間が省けます。
また薬やサプリメント常用者に聞くと、摂取したかどうかを忘れてしまう・覚えていないという悩みを抱えている人が多くいます。特に認知症で、別の持病を抱えている人にとっては深刻な問題です。
これについても、経皮吸収型であれば摂取しているかどうかをパッチが貼付されているか否かだけで判断できるので、非常にわかりやすく、摂取し忘れを防ぐことができます。
2. 緩やかな摂取、持続性
一般的に経口摂取した成分については、体内の消化器官を経て2-3時間後には体外に排泄されると言われています。
それに比べて、経皮吸収は肌からゆっくりと成分を吸収して毛細血管から全身に成分を到達させるため、最大24時間継続して効果を発揮します。
さらには、ゆっくり吸収されることで血中濃度が安定するため身体への負荷が小さく、効果の変動が起きにくいことで副作用も軽減されることが期待されます。
ニコチネルパッチによる禁煙もこの特徴を活かしたものです。
3. 代謝されない
経口摂取された成分は消化器官を経て吸収されたのち、全身にいきわたる前に肝臓を通過します。その際、臓器の代謝酵素により一部の薬剤は代謝されてしまい、本来求められている効果を発揮しないまま体外へ排出されてしまいます。
一方の経皮吸収は皮膚に貼付すると、表皮や真皮を通過し毛細血管に直接溶け込み全身に運ばれるため、代謝されることなくその効果を発現することができます。
一般的に経口摂取型に含まれる成分量が多いのは上記作用による部分が大きく、含まれる成分量と実際に吸収される成分量は必ずしも比例するわけではありません。
経皮吸収のデメリット
メリットもあればもちろんデメリットもあります。
1. 適合する成分が限定される
以前、記事にて説明した通り、経皮吸収される成分には細かい条件があり、それらをクリアしなければ皮膚からの吸収は望めません。
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分子量や融点についてはその物質そのものが持つ特徴であったりするため、どんなに技術が発達したとしても、経皮吸収が実現できない成分は存在すると考えられています。
2. 即効性は期待できない
持続性はメリットですが、逆に即効性がないというのが経皮吸収のデメリットです。
緊急時の注射に代表されるような、症状を一時的に抑える即効性が期待される薬剤については経皮吸収型に適していないと言えるでしょう。
3. 皮膚への症状
ゆっくりと浸透することによって副作用が少ないことが期待できる分、皮膚に貼付するため、皮膚が弱い方や皮膚アレルギーを持っている方はかぶれや炎症を起こす可能性があります。
経皮吸収が活かされる場面
では、経皮吸収にどんな未来が期待されているのでしょう?
そもそも、我々人間は現在ほとんどの栄養を口から体内に入れ消化されることで摂取・吸収しています。
口からの摂取(経口摂取)で十分だと主張する方もいるかもしれませんが、経皮吸収が普及することによって、様々な分野でまた新たな可能性が出てくるのです。
薬剤としての可能性
経皮吸収は世界的に見ても一般的な消費財よりも医薬品へ応用されている技術です。
特に以前ご紹介した禁煙希望者用の「ニコチネルパッチ」や、喘息患者用の「ホクナリンテープ」。さらにはまた別の記事で改めてご紹介しますが女性用のピル「Evra(エブラ)」など、多くの医薬品が存在します。
経口摂取ができない寝たきりの入院患者や、長時間継続して薬剤投与が必要な患者向けに、経皮吸収を活用した薬剤は今後さらに需要が増加してくものと考えられます。
栄養補助剤としての可能性
栄養補助剤と言うと少し難しい印象を受けますが、サプリメント等がこの栄養補助剤にあたります。
現在アメリカで流行している貼るサプリメントのほとんどが、マルチビタミンやビタミンCなど、元々流通していた錠剤タイプのサプリメントと同成分のものですが、将来的には補助剤としてさらなる可能性があると思っています。
例えばカロリー摂取。
人によっては職業柄ご飯を食べる時間がない、もしくは病気やアレルギー等によって口から食物を接種するのが難しい人が、貼るだけでカロリーを摂取できるようになればすごいと思いませんか?
1日3食ごはんを食べなくてもいい、もはや「食べることが娯楽」になる日もそう遠くないのかもしれません。
まとめ
- メリットは3つ(手間と時間削減、持続性、飲み忘れ防止)
- デメリットは3つ(限られた成分のみ、即効性△、皮膚への影響)
- 薬剤、栄養補助剤として大きな可能性を秘めている
最後に
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