経皮吸収について何度もお話してきたかと思いますが、世間では「経皮毒」という単語のほうが認知が高いように感じます。
経皮吸収と経皮毒はなにが違うの?という点を含めて解説していきます。
経皮毒とは
「経皮吸収」と「経皮毒」はそのメカニズムやフローは同じですが、浸透する成分によってその呼称が変わってくるようです。
「経皮吸収」は薬剤や有効成分など身体にいい物質を皮膚から浸透させること、一方の「経皮毒」は化学物質を用いた商品(シャンプー、コンディショナー、ハンドクリーム等)を使用することによって皮膚からその化学物質が体内に吸収され、毒物として体内に蓄積することを総称してと呼ばれているようです。
問題となっている有害化学物質
Web上には真偽不明な情報が錯そうしていますが、問題視されているのは下記の7つに分けられます。
合成界面活性剤
主な成分はノニルフェノールやラウリル硫酸ナトリウムなどで衣料品を洗う際の液体洗剤に含まれることで知られています。
乳化剤
主な成分はポリエチレングリコールやプロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどで、化学物質を混合させるときに使用されるものです。
皆さんご存知の通り、水と油はそのままでは混ざりませんよね?この乳化剤を用いることによって、通常では混ざらない物質を掛け合わせることができるのです。
酸化防止剤
ブチルヒドロキシアニソールなど、加工食品に使われることが多いことで知られています。
肌に関係するもので言えば、ハンドクリームに使われていることがほとんどですね。
保存料
パラベンという物質が有名で、世の中に存在する液体加工製品のほとんどに使われています。
紫外線吸収剤
オキシベンゾンなど、日焼け止めクリームに必ず用いられている物質です。
染毛料
パラフェニレンジアミンが有名で、髪の毛を染める染色剤に必ず使われています。
着色料
その名の通り色を付ける際に使用する化学物質で、衣料や化粧品、その他の製品に安定した色を付ける際は必ず用いられるものです。
経皮毒は本当なのか?
ここまで聞くと、「経皮毒」がすごく恐ろしいものに思えていませんか?
上記のうち必ず一つは日常的に使用するほとんど全ての製品に使用されているため、回避するのは非常に難しいと言えるでしょう。
でもご安心ください。「経皮毒」はほぼ嘘といってもいいほど、気にする必要はありません。
一般的に言われる「経皮毒」は以前記事で説明している経皮吸収されるための条件を満たしていないのがその理由です。
親水性と親油性
皮膚から吸収されるためには水に溶けやすく、油にも溶けやすい2つの特性を持つことが重要です。
さらにはその上で、経皮吸収を促すために皮膚と密着する特殊な糊のような粘着成分が必要となります。「経皮毒」問題にてしばしば取り上げられる衣類は粘着成分が用いられていない上に、そのほとんどの衣類は皮膚と密着していないため経皮吸収の心配は不要と言えます。
皮膚に接している時間
経皮吸収最大のメリットはその効果の持続時間が長いことです。皮膚から成分が吸収され、血液に溶け込み全身を巡ることで安定して有効成分を届けることができます。
これを逆にとらえると、数秒~数分程度皮膚に物質が接したところで経皮吸収されることはほとんどないということです。
スキンケアやヘアケア用品は長く皮膚に付着していたとしても10分程度、その間に皮膚から浸透するのはごく微量なため、特別な疾患を持つ人以外は無視できる範囲の話です。
体内への蓄積
経皮毒を主張するWebページには、皮膚から吸収された化学物質は一生体内に蓄積し続けると謳っているものがありますが、これは全くもって科学的根拠のない主張です。
体内への蓄積はむしろ口からの摂取(経口摂取)のほうが問題になっており、多くの発展途上国では食べ物に含まれる重金属が体内に蓄積する「重金属蓄積」による死亡が大きな問題となっています。
体内への毒物蓄積を心配するのであれば、スキンケアやヘアケア用品に注意するよりも、日常で摂取する食べ物に注意したほうが有効だと言えるでしょう。
まとめ
- 「経皮吸収」と「経皮毒」は呼び方が異なるだけで、同じ現象を指す
- スキンケア、ヘアケア、衣類によって体内に吸収される化学物質はごくわずか
- 経皮毒によって体内に有害物質が一生蓄積されることはない
最後に
いかがでしたか?
今回は誤った情報が多く出回っている「経皮毒」について解説しました。経皮吸収されるためには、一定の条件が必ず必要になるので、化学成分への過度な心配はしないでくださいね。
Wikipediaにも正しい「経皮毒」の情報が載っていますので、さらに気になった方は読んでみてください。
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